キミは山から大きな岩が落ちてきたらどうする?一流の合気道家なら紙一重で【避ける】いやいやオレなら走って【逃げる】

 

『 コイツ ただ者じゃねぇ!』


いったいこの刺客は!?・・・

 

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~ダメダメ門下生 危機一髪~

 

静寂な闇に包まれたある夜だった。


突然ひとりの男がオレの行く手を遮るように立ち塞がる。


男は飄々として殺気は微塵も感じられないが、逆にそれが不気味であり、その隙のなさから相当な手練であることが伝わってくる。


( 一瞬でも隙を見せたら殺られる )


オレは五感を研ぎ澄まし男と対峙する。


一定の間合いの中でお互い動かない、いや正確には動けない。
一歩でも間合いを詰めれば斬撃が飛んでくる。


( ドクン ドクン・・・ )


ほんの数秒がとてつもなく長い時間に感じられ、オレの額を汗がつたう。


極度に張りつめた空気の中、オレの左後方で突然声が聞こえる。


その声にほんの一瞬気を取られたオレの隙を逃さず、男は攻撃を繰り出してきた。


( しまった!)


男の攻撃がオレの肩をかすめたが、紙一重のところで回避し致命傷はまぬがれる、
と同時にオレのカラダが咄嗟に反応する。


素早く入身で男の懐に入り、次の瞬間


鈍い音と共に男のカラダが地面にめり込む。


オレの四方投げによって・・・

 

 


オレは合気道家だ。

 

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自ら私闘は望まない・・・

 

 


あれはオレが入門して間もなくの頃、先輩である岡弐段に尋ねたことがある。


「 岡さんくらいの実力者だと、流川で酔っ払いが絡んできても秒殺でしょう?」と。


すると岡弐段は、静かで優しい微笑みを浮かべながら答えた。


「 いえいえ、争わないですむものは争わない方がいいですよ。」

 


一流の武道家ほど争いは好まないものだ。


なかでも特に合気道は争わない武道だ。
故に合気道は自分から仕掛ける技というものがない。 


岩が落ちてくるとする。
柔道の場合その岩を投げる。
空手だと岩を叩き割る。
合気道は岩を【 避ける 】のだ。

日野師匠 談

 


オレも合気道家の端くれとして、師匠の言葉と岡弐段の静かで優しい微笑みをこの胸に刻み込んでいる。


だが今は状況が逼迫している。
一瞬の躊躇は自らの命取りとなる。


降り掛かってくる火の粉は振り払わねば・・・

  


男は立ち上がり、なおもオレに攻撃を仕掛けてくる。


男もまた、オレの攻撃を致命傷となる紙一重のところで防御していたのだ。


( コイツ 相当手ごわい )


だが既に手負いの男に攻撃のキレはない。
オレは転換で一瞬にして男の背後を取り、男の手首の関節をきめる。


そしてついに・・・

 

男は断末魔の声をあげる。

 

 

 


「 技が違いますよっ!」(小声)


( へっ?????)


「 技 間違えてますよっ!」(小声)

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 

ガーーーーーーーーーーーン!

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( 盛大にやらかしたぁ~ 涙 )

 


張りつめていたオレの中の何かが、ガタガタと音を立てて崩れていく。


昇級審査本番 で技を間違えるという致命的なミスを犯したオレ。


断末魔の声をあげたのはオレの方だった。


「 あぁぁ~~~~~~~!」( 絶叫 )


審査を終えた道場で、畳にひれ伏したオレの叫びが虚しくこだまする。


オレの昇級審査は失意のうちに、そして最悪の結果で幕を閉じたのだった・・・

 

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昇級審査で相手をしてくれた 片山参段

小声で教えていただきありがとうございました。

 

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